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金色の背徳 第8話

2009/02/08 22:01 

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 受話器を置いた涼子は、苛立ちを隠し切れずに煙草を銜えた。外国製のメンソールでニコチンの濃度は低いものの、本数は確実に増えている。
 オフィスの自分の机に片肘をついて紫煙を吹き上げた。
 十坪ほどの狭いスペースに事務デスクが三台、パソコンに電話、ファックス。専門書の並んだ書棚、応接セットが詰め込まれるように置かれている。そろそろ手狭になってきたので引越しをしたいのだが、それには先立つものが必要だ。
「玲緒奈……」
 吐き捨てるように呟いた。
――何とかしないと――
 出るのはため息ばかりだ。
 女弁護士ともてはやされ、気取った生活を送っているように思われているが、内情は火の車だった。
 知名度はあって仕事は入ってくるのだが、ほとんどが一般家庭の妻からの離婚の相談である。「女性の味方」をキャッチフレーズにしているだけに、彼女たちからの依頼は受けざるを得ない。しかし手間がかかる上に、報酬は少ない。
 一等地に構えるこの事務所の家賃だけでも大変な額だ。彼女が海原家の相続に顔を突っ込みたがるのは、こんな切実な問題からである。
 とりあえず海原からの顧問料で糊口をしのいでいるが、もし玲緒奈が実権を握ったら彼女の糧道が断たれてしまうのは想像に難くない……。
 涼子が弁護士として一定の地位を築けたのは、海原の援助が大きい。それは彼女も心から感謝している。
 ただ、一介の建設作業員だった彼が、従業員百人を抱える会社を起こしえたのは、姉の尽力があってのことだ。海原に惚れこんだ姉の倫子は、彼の起業にあたって両親を泣き落とし、実家の家屋敷を抵当に入れてまで、資金を調達させたのである。
 結果として海原は成功し、たっぷり利子を付けて返済してくれたのだが、その恩を忘れてはいないか。姉の死後、わずか一年で若い後妻を家に入れると聞いたときも、涼子は断固として反対した。
 姉の内助があったからこそ海原建設は躍進できたのだ。それを突然、横から入ってきた女にかき回されるのは我慢できなかった。そもそも会社の半分は姉のものである。だから姉の亡き後、妹の自分が受け継いでも何らおかしくない、涼子の理論ではそうなっているのだ。こんな時は法律家であることを忘れてしまう。

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 今日、何度目かのため息を漏らした彼女は、コンパクトを取り出した。デスクの照明を点け、自分の顔を覗き込んでみる。
 化粧栄えする顔立ち。目元がやや吊り上ってきつそうな感じがあるが、ふっくらした頬がそれを補っている。だがそろそろ年齢的な首筋の弛みも気になるようになってきた。目じりのしわも、そろそろ化粧では隠し切れなくなっている。
 女流弁護士で三十八歳ならば充分に若い。仕事で脂がのるのは、まだまだこれからである。しかし、美貌とグラマーな肉体、いわば「女」の部分を売りにしてきた涼子にとって容姿の衰えは、日々刻々と迫り来る死刑執行の恐怖にも似ていた
――やはり海原家の財産を――
 義兄の死を祈るわけではないが、あの莫大の財産の分け前が入ることになれば、状況は一変する。
 涼子はくすぶる煙草を消し、脚を組み換えた。薄いブラウンのミニスカートから豊かな太ももがのぞく。中小企業の社長を相手に、この脚の組み換えひとつで仕事を取ったことも数え切れない。しかしその手も長くは続かないだろう。
 亡き姉や海原、繭美の顔が浮かんでは消えていく。仇敵である玲緒奈の高慢な笑顔までもが脳裏をかすめる。そして最後に登場したのが繭美の夫、西条駿策の姿だった。
 弁護士と司法書士、仕事上で重なる分野も大いにある。これまで客を紹介し合ったことも何度かあった。まだ若いが実直で責任感の強い好青年、安心して仕事を任せることができる男だ。それになかなかの男前でもある。
――彼が味方になってくれれば――
 涼子は三本目の煙草に火を点け、ゆっくりと煙を吐き出した。ここはひとつ乾坤一擲の大勝負に賭けるしかない、女弁護士は腹をくくった。

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