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十字架上の貴婦人 第4話

2009/06/09 18:17 

「はい、財部でございます」
 夫のいない朝を迎えた貴和子が、いつも通りに掃除を済ませた時、それを見計らったように電話が鳴った。昨夜の恥戯を少しも感じさせない、澄ました上品な声色だ。
「奥様、ですか?」
 男の声がいきなりそう聞いてきた。
「はい。財部の妻ですが」
 丁寧に受け答えながらも、貴和子は気を引き締めた。
 たまにだが、昼間に変な電話がかかってくることがある。卑猥な言葉を連発して楽しんでいるイタズラ電話だ。近所の奥さんたちとの話題になったこともある。
「わたし、先生の事務所でお世話になっている金井と申します」
 忙しそうな声で男は名乗った。
「いえ、こちらこそありがとうございます」
 如才ない返事で切り替えした。「先生」という言葉が貴和子の自尊心をくすぐる。慣れたとはいえ、これは今も昔も変わらない。
 夫は家では仕事についてほとんど語らない。
 だから彼女は、所員や事務員の名前を知らないのだ。電話を使った詐欺が巷を騒がしていることもあり、貴和子も常日頃から一通りの注意はしていた。
「財部先生は今、セントラルシティホテルで顧客と応対中なのですが、書類をひとつご自宅へ忘れたとのことなのです」
 珍しいこともあるものだ、貴和子は思った。
 今まで夫が忘れ物をしたなど聞いたことがない。ますます怪しく思ってしまう。
「迎えの車をやりますので、奥様に書類をホテルまで届けて欲しいということで……」
 急いでいるのか、金井という男は早口でまくし立てる。
 しかし胡散臭い電話だ。車をよこすなどいかにも作り話に聞こえる。物騒な事件が多発している昨今だ、貴和子は警戒心を強めた。
「ですが書類など……」
 そんな誘いには応じないとばかりに、貴和子は遠まわしに拒絶を匂わせた。
 禁じられてはいないが、彼女が掃除以外で夫の書斎に入ることはない。だからどんな書類がどこにあるかなんて、貴和子に分かるはずもなかった。
「それも先生から伺っています。先生の机の右側の書棚、そこの右から三冊目の黒いファイルなんですが」
 本当に夫の頼みを受けているのか、金井は的確に場所を指摘した。確かに机の右隣に小さな本棚が置いてある。ファイルの束が突っ込まれているのも知っていた。
「失礼ですが、主人に確認の連絡を入れてもよろしいでしょうか?」
 貴和子は少しだけ口調を改めた。
 彼女の警戒は杞憂に終わりそうだ。金井は書類の位置まで示すのだから、おそらく間違いないだろう。しかし用心に越したことはない。
「ええ。それは構いませんが、おそらく電話には出られないかと……」
 電話の向こうで相手が弱っている様子が窺えた……。




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