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女神の乳房 第13話

2008/03/24 14:55 



 朝刊を五紙ほど買ったが、どの新聞にも昨夜の出来事についての記事は載っていなかった。
 すでに会社には三日ほど欠勤すると連絡は入れていた。入社して約一年半になるが、休業日以外に休んだのは初めてだった。世話になった叔父が急病で入院した、勤務態度の良かった裕美子の言葉だけに上司はすぐに納得してくれたのだ。
 午前中はテレビのニュース番組を見て過ごしたが、こちらも事件については少しもふれていなかった。
 不安と焦燥の入り混じったまま、ベッドに横になる。座っているだけでも体力が消耗していくようだ。
 今朝も三回渉から電話が入っていた。
「昨日は僕が悪かった。謝るから連絡して欲しい」
 昨夜の分から数えると、七、八回はかかってきているだろう。だが裕美子は連絡するつもりはなかった。昨日の一件で渉が嫌いになったわけではなく、とても人と話す心の余裕がないというのが正直なところだ。
(あの男が死んでたら渉だってわたしを見放すだろう……。どうせわたしたちはもう終わり。わたしの人生は二十三年で終わったの)
 諦めの心境になっていたこともある。

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(人を殺した女だと知ったら、彼だってわたしと結婚できないはず)
 渉が犯罪者の自分を匿ってまで結婚してくれるとは思わないし、それが普通の感覚だと思う。それについて彼を責めるつもりもない。ただしばらくはそっとしておいて欲しい、それだけだった。
 夕方までテレビにかじりついていたが、結局なにも収穫はなかった。朝と同じように駅へ向かい、三紙の夕刊を買ってきた。全ての新聞を細部まで目を通したがやはり載っていなかった。
(何でだろう、本当に死んでないかもしれない)
 新聞をたたんでテーブルの角へ寄せた。二階の窓から外の往来に目をやると、会社帰りのOL風の三人が談笑しながら歩いていくのが見えた。自分と同じぐらいの歳だろうか、裕美子は思った。
(昨日までのわたしみたい。何も悩みがなさそうで……)
 夏の陽射しはまだ強く、三人はハンカチを団扇のようにしながら歩いていた。彼女たちに向ける視線の隅に、裕美子は不審な男を捕らえた。四十歳前後だろうか、がっしりとした体格に精悍な顔。この暑さの中でもきちっと背広の上着を着ている。電柱にもたれたその姿は、ドラマで見る刑事の格好にそっくりだ。しかもその目は時おり自分の部屋へ向けられているようだった。
(まさか……、警察?)
 膝がガクガクと鳴り始めた。カーテン越しに部屋の中を、自分の心中を覗かれているような気がした。素早く厚手のカーテンを閉めてベッドにもぐりこんだ。
(警察? 本当に警察かしら? こんなに早くわたしの所へ……)
 ベッドの中で震えが止まらない。
(やっぱり死んだのよ、あの男。ただ大きな事件じゃないから新聞には載らなかっただけ。あの刑事はわたしを見張ってるんだわ)
 刑事なんてドラマの中にだけ存在するものだ、まして自分が見張られるなど、夢にも思わなかった。
(どうすればいいのよ……、このまま逮捕されるのを待つしかないの?)
 殺人犯として自分の顔が載った新聞ばかりが浮かんでは消えていく。

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 何だかんだと雑事に忙しく、今週初めてのスポーツクラブで二日分のメニューをこなした。シャワーを浴びた裕美子の身体にはずっしりとした疲労感が残った。しかし気だるさはなく、むしろすがすがしい気分だった。
(休憩してから帰ろう)
 ジーパンに黒いシャツの若々しい服装に着替え、喫茶ルームに入った。いつものようにオレンジジュースを注文し、バッグから煙草を取り出した。
「煙草を吸うようになったんだね」
 背後からの声に振り返ると、はにかんだような表情の渉が立っていた。裕美子の胸のうちを気まずい思いが流れる。先日と同じくスーツ姿で仕事の途中のようだ。
「座ってもいいかな?」
 裕美子の向かいの席を指差す。無言でうなずくと、渉は素早く腰を下ろした。
「何回か連絡したんだけど……」
 内ポケットから煙草を取り出し、裕美子と視線を合わせないように窓の外を見ながら言った。彼女は火を点けたばかりの煙草を揉み消し、
「ごめんなさい……、いろいろと立て込んでて……」
 うつむきながら答えるのがやっとだった。
「ここで待ってればいつかは会えるだろうと思ってね。ちょくちょく寄ってたんだ……」
 先日の自信に満ちた態度に少し陰りを帯びている。約束をキャンセルしたことを申し訳なく思っているのが裕美子には痛いほど解った。
「この間は本当にすまなかったと思ってるよ。だからまた時間を作って欲しいんだ」
 静かな湖面のようだった人妻の心に波紋が広がる。自分にも電話を取らなかった負い目があって心中は揺れた。
「別に君の事を軽く見たわけじゃないよ。ただどうしても外せない仕事だったんだ、それは分かって欲しい」
 それは充分に理解していた。仕事と女のどちらかで、仕事の方を優先する男は、つまりそれほど重要なポジションに居るわけだ。夫を見ていれば良くわかる。別に軽く見られたとは裕美子自身思っていない。
「それは良くわかります。主人も忙しい人だから……」
「ありがとう。君が怒ってるだろうと思ってたから、わかってくれて嬉しいよ」
 渉はハンカチで額の汗をぬぐう。
「それならいつ会える?」
 今度は少し強い口調で聞いてきた。テーブルに置いた拳には力がこもっているようだ。
「そう……ね」
 わたしがせっかく貞淑な妻を続けようと決心したのに、裕美子は少しいらだちを覚えた。オレンジジュースを一口飲み、
「わたしの方から連絡させて」
 迷いながらもきっぱりと言った。
「わかった……。じゃあ待ってるから」
「うん、必ず連絡する」
 しぶしぶうなずく渉に、裕美子は精一杯の微笑を浮べた。

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「どうしてはっきりと断らなかったの」
 帰りの車を運転しながら、自分自身に問いかけた。運転手のいらだちをよそに、赤いアウディは快調に走る。
(あんな曖昧な返事しちゃって。あれじゃあいつでも好きなときに連絡できるじゃないの。あなたの決意は嘘だったの……)
 バックミラーが、ため息をつく裕美子の顔を映していた。



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